浮き草ゲーマー日記

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【MTG 統率者戦】 cEDH入門 ギトラグの怪物 解説記事

 

0 序文

 この記事は競技的な統率者戦、通称cEDHにおける《ギトラグの怪物》デッキの紹介である。いわゆるパワーレベルでは9〜10、ゲームのエンドターンは2〜5になることが多く、《意志の力》をはじめとしたピッチカウンターやデモコンタッサがバシバシ飛んでくるような環境を想定している。禁止改定としては《船殻破り》禁止後で、《ダウスィーの虚空歩き》が登場した後である。

デッキリスト

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1 《ギトラグの怪物》の特徴

 恵まれたスタッツになぜか付いている接死と、どこが伝説なんだとツッコミたくなる没個性な名前がチャーミングなクリーチャーだが、cEDH界においては珍しい非青ジェネラルとして活躍している。ドロー効果による継戦能力はもちろんのこと、最大の特徴は《ダクムーアの回収場》(以下ダクムーア)とのコンボであり、ギトラグを一線級ジェネラルに押し上げている。

 

1.1 ギトラグの長所

・カウンターに強い
 一般的なcEDHデッキに採用されているカウンターは10枚前後だが、そのうち無条件でクリーチャーを弾けるのは《意志の力》《否定の契約》《マナ吸収》くらいであるため、キャストするのがギトラグ+共鳴者(手札を捨てられるクリーチャー)だけであるダクムーアコンボにカウンターが刺さらない可能性が高い。

・どこから勝つのか分かりにくい
 カウンターのされにくさから、いつの間にかギトラグ側の手札にコンボパーツが集まり、カウンターされないクリーチャーのキャストだけでコンボが始まって勝ってしまうパターンが存在する。また、後述のクリンナップループはキャストすら挟まずに開始するため、相手からすると対応しづらい。

・リソースが続きやすい
 持ち前のドロー能力によって手札を得やすく、一度コンボが失敗してもパーツを集め直して再チャレンジが可能。場が膠着している場合でもリソースを蓄えながら虎視淡々とコンボチャンスを窺うことできる。

 

1.2 ギトラグの短所

・青がない
 豊富なカウンターやドローを有する青を使わないのはcEDHにおいてハンデ同然。

・除去に弱い
 クリーチャーコンボであるため除去に引っかかりやすい。共鳴者のキャストに合わせてギトラグを除去されるとお手上げ。また、どこから勝つのか分かりづらいという特徴が裏目に出て、対面から雑に除去が飛ばされることも多々ある。

・墓地対策、ドロー制限に弱い
 ギトラグは毎ターンの維持コストをドローに変換することでアドバンテージを失わずに場に居続けられるのだが、《ダウスィーの虚空歩き》や《概念泥棒》を出されると純粋なアド損になって苦しくなってしまう。ギトラグ側からの対処札も存在するものの、そこにサーチまで吐いてしまうと結果的にコンボパーツを集めきれないことが多い。

 

2 コンボについて

2.1 共鳴者ループ

条件:場にギトラグ、共鳴者(手札を捨てる機動効果を持つクリーチャー)、手札にダクムーア

①共鳴者によってダクムーアを墓地に落とす。ギトラグのドロー効果が誘発
②ドローをダクムーアの発掘で置換する。その際に土地が墓地に落ちるともう一枚ドローできる
③エルドラージが墓地に落ちるとライブラリー修復効果が誘発し、墓地がライブラリーに戻る

 以上を繰り返すことでデッキ内の全てのカードを無限にドロー、回収し使い回すことができる。あとは《睡蓮の花びら》から無限マナを出して《破滅の終焉》を撃てば勝ち。
 また、このコンボはインスタントタイミングでも可能なのが特徴で、《暗黒の儀式》で無限黒マナを出してから《黒檀の魔除け》などを無限にキャストして勝利することができる。《黒檀の魔除け》を採用しない場合は《輪作》と《ガイアの揺籃の地》によって緑無限マナも出して《暗殺者の戦利品》を無限キャストすると相手の盤面は全て消滅する。

 

2.2 クリンナップループについて

 ギトラグのコンボの中で非常に特殊かつ難解なのが、終了ステップ後にターンプレイヤーの手札が8枚以上ある際に、7枚になるように手札を捨てることを利用したクリンナップループである。ルールをよく理解していないと誤った処理をしてしまったり、本来できるはずだったコンボを逃したりすることに繋がるので、ギトラグを使う場合は周りのプレイヤーに説明できるレベルにはしておきたい。

2.2.1 クリンナップループの原理

条件:場にギトラグ、手札がダクムーアを含む8枚以上

①クリンナップステップでダクムーアを捨てる
②土地が墓地に落ちたのでギトラグのドロー効果が誘発
③ダクムーアの発掘効果でドローを置換し、ダクムーアが手札に戻る。発掘の際に土地がさらに落ちた場合はギトラグが再び誘発し、追加で1枚ドロー
④手札が8枚、追加でドローした場合は9枚になっているはずなので、新たにクリンナップステップが始まって①に戻る。9枚になっていた場合はダクムーアと共に不要なカードを捨てる

 以上の手順を繰り返すことで、③のドローと④のディスカードを無限に行うことができ、エルドラージたちのライブラリー修復効果を併せることで手札を理想の7枚+ダクムーアにすることができる。
 ここで注意すべきなのが、④で新たなクリンナップステップが始まる際にステップを跨いだマナが全て消えることで、無限マナを生み出すためにはどこかで共鳴者ループに入らなければならない。

 

2.2.2 クリンナップからの勝ち方①《黒檀の魔除け》採用型

条件:場にギトラグ、手札がダクムーアを含む8枚以上、《Elvish Spirit Guide》を追放していない

①クリンナップループによって手札を整える。必要なのは《暗黒の儀式》《忘却の冠》《Elvish Spirit Guide》《輪作》、ダクムーアの5枚で、あとは場合によって《夏の帳》などを加えておく

②ギトラグの誘発効果が解決されてスタックが空になった後にもう一度優先権が回ってくるので、《Elvish Spirit Guide》で緑マナを出し、適当な土地をサクって《輪作》をキャストし黒マナが出る土地を持ってくる
③《暗黒の儀式》で黒3マナに増やし、2マナで《忘却の冠》を適当なクリーチャーを対象に付ける
④黒1マナ余った状態で共鳴者ループに入れるため、《暗黒の儀式》を連打して黒無限マナを出し、《黒檀の魔除け》を無限キャストして勝ち

 この手順によって浮きマナなしの状況からでも勝利することができる。浮きマナがある場合は《夏の帳》などを構えることで相手の妨害に対応するとよい。

 

2.2.3 クリンナップからの勝ち方②《黒檀の魔除け》不採用型

条件:場がギトラグを含む2体以上、手札がダクムーアを含む8枚以上、《Elvish Spirit Guide 》を追放していない、《ガイアの揺籃の地》が手札かライブラリーか墓地にある

①クリンナップループによって手札を整える。必要なのは《暗黒の儀式》《忘却の冠》《Elvish Spirit Guide》《輪作》ダクムーアの5枚。残りの3枚は何でも良いが、《ガイアの揺籃の地》はライブラリーに残しておく
②クリンナップループの③で追加ドローが発生し、手札が9枚になったところからコンボスタート。《Elvish Spirit Guide》を追放して《輪作》を唱え、《ガイアの揺籃の地》を持ってくる(このとき、手札を2枚使ってギトラグで1枚ドローするため、手札が8枚になる)
③もう一度クリンナップループを行い、《輪作》を手札に戻す
④ギトラグのドロー誘発が解決され、スタックが空になったら優先権をもらえる。《ガイアの揺籃の地》から緑2マナを出し、そのままサクって《輪作》をキャストし、黒マナが出る土地を持ってくる(緑1マナ浮き)
⑤《暗黒の儀式》から《忘却の冠》を唱え、緑1マナ黒1マナ浮きで共鳴者ループに入る
⑥《暗黒の儀式》で黒無限マナ、《輪作》で《ガイアの揺籃の地》と適当な森を交互に出すことで緑無限マナが出るため、《暗殺者の戦利品》を相手の全てのパーマネントに無限に唱えて更地にする。除去なども無限に構えられて実質詰みにできるため、相手に投了してもらう。

 こちらの手順ではライフルーズによる直接的な勝ちにはならない一方で、強いカードとは言えない《黒檀の魔除け》を採用しなくても良いというメリットがある。《汚れた契約》で《黒檀の魔除け》を飛ばしてしまっても安心。前述のコンボと同じく、浮きマナがある場合は《夏の帳》などを構えるとよい。

 

2.3 《ゴルガリの墓トロール》によるダクムーアサーチ

条件:場にギトラグと共鳴者、墓地に《ゴルガリの墓トロール

①共鳴者で適当な土地を捨てるなどしてドローを発生させ、《ゴルガリの墓トロール》の発掘で置換
②発掘6の中に土地が含まれているともう一度ドローが誘発するため、それにスタックして《ゴルガリの墓トロール》を墓地に捨て、再び発掘で置換
③ダクムーアが墓地に落ちるまで②を繰り返す。エルドラージが墓地に落ちた場合も、土地が同時に落ちればライブラリーを修復したのちに続行可能。土地が落ちずに止まってしまった場合も、もう一枚手札から土地を捨てるなどしてドローを発生させれば再チャレンジできる

 以上の手順で高確率でダクムーアをサーチすることができる。既に共鳴者が場に出ている前提のため、共鳴者ループに移行可能。このサーチ手段があることで《俗世の教示者》をはじめとしたクリーチャーサーチを実質的にダクムーアサーチに変換できるのが優れている。

 

3. キーカード解説

《ダクムーアの回収場》

Front
 ギトラグとのコンボで無限ドローを生み出す生命線。このカード以外の勝ち筋は存在しないため、《未知な領域》を《敵対工作員》されたりするとこのカードが追放されて虚無の時間が始まる。

 

《無限に廻るもの、ウラモグ》
Front
 ダクムーアの無限ドローの中でライブラリーがなくなるのを防ぐために採用されている。《汚れた契約》で追放しても良いように《真実の解体者、コジレック》との2枚体制。スタックス相手などでロングゲームになった際には素でキャストすることもあるが、そのルートを勝ち筋に換算できるほどcEDHは甘くない。

 

《野生の雑種犬》
Front
 共鳴者の1枚。コストの面では《朽ちたインプ》に劣るものの、《緑の太陽の頂点》や《召喚士の契約》によってサーチできる点で勝るため両採用。ほぼ同じカードとして《首絞め》も存在しており、2枚とも採用するかどうかは使用者によるところ。

《森を護る者》

Front
 ギトラグの苦手な除去から身を守れる上に、不要な土地を自発的に墓地に送ることでドローに変換し、コンボパーツサーチやクリンナップループに繋げられるすごいカード。一度被覆を付けたクリーチャーに再び被覆を付けることはできないので、同じクリーチャーを対象に何度も効果を発動させたい場合はスタック上で重ねることが必要なことに注意。同様に、《汚物の雨》や《資源の浪費》といった他の土地をサクれるスペルでもクリンナップループに繋げられる。

 

《黒檀の魔除け》
Front
 インスタントタイミングで無限黒マナから無限キャストすることで勝利できるカード。同様のカードとして布告除去の《ゲスの評決》なども存在するが、《死の国からの脱出》全盛期である現在のcEDH環境では墓地追放モードを持つこのカードがオススメ。

 

《ネクロポーテンス》
Front
 強力なリソース確保カードとしての運用は他のデッキと同じ。このカードの存在下でダクムーアが落ちた場合は、ギトラグのドロー→墓地追放効果という順に解決することで追放前にダクムーアを回収できる。クリンナップループを無限に回すことは不可能になるため、試みる場合は一回ずつ省略せずにプレイする必要あり。

 

4. プレイ方針

4.1 マリガン

 少なくとも3ターン目までにギトラグが出る+コンボパーツサーチの目処が立つ手札をキープする。土地はドローに変換できるため4枚程度までなら初手にあってもよく、逆に2枚以下の初手はギトラグの維持コストが厳しくなるためあまりキープしたくない。

 1ターン目に《闇の腹心》や《森の知恵》が出る手札は割と甘めにキープ可能。

《ウルザの物語》によるアーティファクトサーチを前提としたキープは危険で、大抵《敵対工作員》に奪われて破産することになる。サブプランの用意を。

4.2 プラン①速攻

 コンボパーツが手札に揃ってさえいればギトラグ+共鳴者のキャストだけでコンボを始められるので、うまくいけば2~3ターン目にはコンボを始動できる。特にダクムーアを素引きしている場合に奇襲性が高く、相手がカウンターを撃つタイミングがないままコンボを決められることもある。現代cEDHで速攻と呼べるのはせいぜい3ターン目の1番手くらいまでなので、それまでに間に合わなかったり、相手が露骨に構えている場合はプラン②に移行する。

4.3 プラン②多段構え

 3ターン目以降はお互いに妨害を構えあって進行することになるため、適当にコンボを始めるだけではすぐに止まってしまう。コンボを通すためには、相手の妨害が少ないタイミングで、リカバリールートを用意しながら始動する必要がある。

 具体的なチャンスのタイミングとしては、他のプレイヤーが勝ちに向かって走り、それをさらに他のプレイヤーが妨害して止まった直後。卓全体での打ち消しが減っている状態のためコンボを通しやすい。サーチ呪文を複数手札に用意するなど物量作戦で妨害を乗り越えても良いし、《森を護る者》で除去から身を守ったり、《夏の帳》でカウンター対策をするなど、やれることは全てやってコンボを試みる。ギトラグのドローと強固なマナ基盤が物量作戦を支えてくれる。

4.4 ギトラグへのメタカードと、その対抗策

《ダウスィーの虚空歩き》

Front
 墓地に落ちるカードを代わりに追放し、おまけにそのカードをタダで使ってくる意味不明なクリーチャー。《死の国からの脱出》に刺さることもあり、殆どの黒いデッキに採用されている。ギトラグの維持コストで土地が墓地に落ちなくなるためドローすらできず、場合によっては維持コストを支払わずに統率者領域に戻ってもらうこともある。合言葉は「ギトラグ、お前もう船降りろ」

 もちろん自分で除去しても良いが、実際にはそんな余裕もないこともあり、他人に除去してもらうのを待った方が良いことも多い。刺さる相手が多いということは、除去の対象になりやすいということでもある。追放したカードを使うためには自身をサクる必要があるため、勝手に消えてくれることもある。

 

《概念泥棒》
Front
 ギトラグのドロー効果に対応してドローをパクってくる最悪なクリーチャー。《ダウスィーの虚空歩き》と比べるとギトラグ以外の勝ちルートを阻害していない場合が多く、他人の除去は期待しにくい。あまりにこのカードが流行っているようであれば《暗黒波》の採用も一考。

 発掘によってドローを置換すれば奪われることはないため、既に共鳴者+ダクムーアが揃っていれば相手に無限ドローを発生させてライブラリーアウトを狙うことができる。おそらく相手は途中で引いた《致命的なはしゃぎ回り》などを撃ってくるため、その上から余分な土地を捨てることで再度無限ドローを発生させると良い。ライブラリーアウトすら狙わせてくれない《船殻破り》が禁止されたことでギトラグの立ち位置は向上した。

 

《沈黙》
Front

 《夏の帳》でも《森を護る者》でも防げないからギトラグは確実に止まる……と思いきや、効果がクリンナップステップで消えるためクリンナップループに入れば勝てるし、なんなら次の相手のターンのアップキープに勝ってもいいため困らない。

 

5 採用を検討できるカード

《森の占術》
Front
  ダクムーアをサーチできるが、それ以外できないカードなので汎用性が低く採用していない。

 

《ナイレアの介入》
Front
 土地を複数枚サーチできるカードで、そのままクリンナップループに入りやすいのが強み。《森の占術》よりはこっちの方がいい。動きが大振りすぎるのと、相手にギトラグについての知識があると絶対に通してくれないためデッキから抜いた。

 

《Bazaar of Baghdad》

Front
 高すぎるので入れていない

 ギトラグがいると実質的にアド損せずにルーティングできるため強力。《常智のリエール》とは異なり、土地を3枚捨てても追加ドローは1枚である点に注意。

 

《落葉の道三》
Front
 勝利宣言カード。ここに《意志の力》などのクリーチャーに当たるカウンターを使ってくれれば次の共鳴者が通りやすくなっていいかもしれない。《異界の進化》まで採用すれば、共鳴者をサーチすると見せかけてこのクリーチャーを出して動きを封じる奇襲も可能になる。どこかで試してみたい。

 

6 あとがき

 ギトラグは効果処理こそ複雑なものの、狙うコンボが明確でプレイ方針も分かりやすいためcEDH入門には適したジェネラルだと考えている。青のカウンター合戦に疲れたあなたにもオススメ。主要コンボパーツであるダクムーア、共鳴者が安いため、《Timetwister》などを含んだ超高額デッキになりがちなcEDHの中では比較的安めに組めるのもポイント。《ガイアの揺籃の地》や《適者生存》はなくても戦えるが、《Bayou》だけはフェッチのサーチ先として必須なのでなんとかして欲しい。

 この記事を書くにあたって海外のリストや動画、先駆者様たちの記事を参考にしたが、至らない点も多く存在する。質問や指摘などがあればコメントしていただけるとありがたい。